税金

個人事業主・フリーランスが法人化する9のメリットと5のデメリット

個人事業主・フリーランスが、ある程度収入が増えてくると、法人化(法人成り)を考えるようになるかもしれません。

ですが、法人化(法人成り)はメリットだけではなく、デメリットあります。
ですので、メリット・デメリットを理解したうえで、法人化(法人成り)するかどうかを決めなければなりません。

そこで今回、法人成りのメリット・デメリットをまとめてみました。

対外的な信用度が高くなる(メリット1)

個人事業主・フリーランスが法人(会社)にすると、社会的信用度が高くなります。

社会的信用度が高くなることにより、営業取引の幅が広がり、質の高い人材を採用できる可能性が高くなります。

大企業などによっては、法人であることを取引の条件にしていることがよくあります。
ですので、個人事業から会社にすることにより、営業取引の幅が広くなることが期待できます。

さらに、人材の採用においても、個人事業よりも法人の方が有利です。
やはり、個人事業よりも会社の方がきっちりしていて安定しているという印象になりやすいです。

給与所得控除が受けられる(メリット2)

会社を設立すると、あなた自身の収入は会社からの役員報酬になります。

役員報酬を受け取った場合、税金上は、給与所得という取り扱いになります。
給与所得は、役員報酬の収入によって一定の金額を差引くことができます。これを給与所得控除といいます。
給与所得控除は、言ってみれば、概算の経費です。
実際にキャッシュが出ていくわけではないのに、かなり大きな金額が経費として認められるので、大きな節税の効果が見込めます。

具体的には、給与所得控除は次のようになります。

給与等の収入金額 給与所得控除額
~180万円 収入金額×40%(最低65万円)
180万円~360万円 収入金額×30%+18万円
360万円~660万円 収入金額×20%+54万円
660万円~1,000万円 収入金額×10%+120万円
1,000万円~ 220万円(上限額)

例えば、役員報酬が800万円の場合ですと、給与所得控除は、次のようになります。
800万円×10%+120万円=200万円
かなり大きい経費になりますよね。

役員報酬の決め方やルールについて、詳しくはこちらをご覧ください。

家族への給料を経費にすることができる(メリット3)

法人の場合、家族を役員または従業員にすることにより、家族への給料を経費にすることができます。

所得税は、所得が大きくなるほど、税率が上がっていきます(累進課税といいます)。
ですので、家族に給料を払って、所得を分散することにより、家族全体での税金の負担を大きく減らすことができます。

個人事業主・フリーランスであっても、家族が事業に専従しているのであれば、家族への給料を経費にすることができます(青色事業専従者給与といいます)。
ですが、事業に専従しなければならないということで、様々な制約がかかってしまいます。

青色事業専従者給与について、詳しくはこちらをご覧ください。

退職金を経費にすることができる(メリット4)

法人の場合は、退職金を経費にすることができます。
さらに、退職金は、将来の生活原資になるので、退職金を受け取るあなた自身の所得税もあまりかからない仕組みになっています。

個人事業主・フリーランスの場合は、あなた自身の退職金を経費にすることはできません。
ただし、小規模企業共済から受ける共済金については、税金上、退職金の扱いを受けることができます。

小規模企業共済について、詳しくはこちらをご覧ください。

消費税の免税事業者になることができる(メリット5)

消費税は、2年前の売上高が1,000万円を超えるなどの場合に納税する義務があります。

ですので、個人事業主・フリーランスは開業して2年目までは消費税の納税が免除されます。
(1年目の上半期の売上・給与がともに1,000万円を超える場合は、2年目から納税しなければなりません。法人も同様です。)

法人の場合も、資本金が1,000万円未満であれば、会社設立2期目までは消費税の納税が免除されます。

ですので、個人事業主・フリーランスが法人成りをした場合、個人事業で2年間の消費税の免除を受けたうえに、法人でも2年間の消費税の免除を受けることができます。

消費税の免除の仕組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。

欠損金の繰り越し期間が長くなる(メリット6)

過去の赤字を将来の黒字にぶつけることにより、税金を大きく減らすことが可能です。

青色申告の場合、個人事業主と法人では、赤字を繰り越すことができる期間がまったく違います。

具体的には、欠損金・損失(税金上の赤字)を繰り越しできる期間は、次のようになります。

  • 個人事業主・フリーランス 3年間
  • 法人 10年間

個人事業主・フリーランスの3年間ですので、赤字の金額が大きいなどの場合は、3年間の黒字では相殺しきれないかもしれません。
黒字と相殺できなかった分の赤字については、期限切れとなり税金を減らすことができません

法人(会社)の青色申告の欠損金の繰越について、詳しくはこちらをご覧ください。

個人事業主・フリーランスの青色申告の損失の繰越について、詳しくはこちらをご覧ください。

借り上げ社宅の制度を利用できる(メリット7)

借り上げ社宅とは、会社が大家から家・マンションなどの住居を借りて、それを役員・従業員に貸し出すことです。

法人であれば、一人社長であっても借り上げ社宅の制度を利用することができます。
ですが、個人事業主本人については、利用することができません。

借り上げ社宅を利用すると、家賃の8割ぐらいを会社の経費にすることができます。

大家さんと法人名義での契約をやり直すなどの手間やコストはかかりますが、かなり大きな節税の効果が期待できます。

借り上げ社宅について、詳しくはこちらをご覧ください。

出張手当・日当を経費にすることができる(メリット8)

出張をすると、身の回りの消耗品や外食が必要になるなど色々と経費がかかります。
そういった色々な出張経費を実費で精算せずに、出張手当・日当を支給することが認められています。

法人であれば、出張手当・日当を経費にすることができます。
ですが、個人事業主本人については、経費にすることができません。

出張旅費規程や出張報告書の作成などの手間はかかりますが、出張の多い場合は有効な節税の方法になります。

出張手当・日当について、詳しくはこちらをご覧ください。

事業年度(決算月)を自由に設定できる(メリット9)

個人事業の場合は、1月1日~12月31日の暦年を会計期間として、決算と所得税の申告をしなければなりません。

法人の場合は、事業年度(決算月)を自由に決めることができます。
ですので、例えば、繁忙期ではなく売上が落ち着く月を決算月にした場合、利益の予測のズレが小さくなり、さらに時間的な余裕があるので、十分に決算対策をすることができます。

事業年度(決算月)の決め方について、詳しくはこちらをご覧ください。

会社設立の登記のコストがかかる(デメリット1)

会社を設立するためには、法務局に会社の登記をしなければなりません。
ですので、登録免許税や司法書士報酬などの会社設立の登記のコストがかかります。

通常は、株式会社か合同会社のどちらかになるでしょうが、どちらにするかで会社設立の登記のコストが大きく変わります。
会社設立の登記をあなた自身でするか、司法書士などに任せるかによりますが、設立コストの目安は次のようになります。

  • 株式会社の場合 25万円~35万円
  • 合同会社の場合 10万円~20万円

社会保険の強制加入(デメリット2)

個人事業の場合、従業員が5人未満などであれば、社会保険に加入する必要はありません。
ですが、法人の場合は、一人社長の会社であっても、社会保険は強制的に加入になります。

社会保険にかかるコストは、個人と会社それぞれ給料の額面の15%ぐらいになりますので、かなりの負担になってしまいます。

ですが、社会保険に加入するということで、質の高い人材を採用しやすくなります。
求職者から見ると、社会保険に入れるのと入れないのとでは大きな違いです。
社会保険料は会社にとっては高いコストになりますが、従業員にとっては大きなメリットになります。

住民税の均等割が大幅に上がる(デメリット3)

住民税の均等割りとは、所得(税金上の利益)の多い少ないにかかわらず、均一にかかる税金のことです。
個人事業主・フリーランスと法人では、均等割りの税額がかなり違います。
具体的には、以下のようになります。

  • 個人の場合 5,000円
  • 法人の場合 70,000円(資本金1,000万円以下、従業員50人以下の場合)

均等割りは赤字でもかかってくる税金ですので、赤字の会社には負担が大きいかもしれません。

交際費に上限がある(デメリット4)

個人事業主・フリーランスについては、交際費に上限はありません。
ですが、法人の場合、以下のどちらか大きい金額までしか経費にすることができません。

  • 年800万円
  • 接待飲食代×50%

さらに、交際費は、プライベートの支出が混じりやすい経費です。
ですので、税務調査でも重要なチェックポイントになります。
税務調査でプライベートの支出として認定された場合、法人では大きなダメージになります。

法人の場合は、プライベートの支出として認定されると、役員賞与の取り扱いになる可能性が高くなります。
役員賞与として認定された場合、役員賞与は法人の経費にならないので法人税がかかるうえに、あなた自身の賞与になるので所得税がかかってしまいます。
つまり、法人税と所得税の両方がかかるのでダブルパンチになってしまいます。

交際費について、詳しくはこちらをご覧ください。

事務的な手間・コストがかかる(デメリット5)

法人にすると、個人事業と比べて事務的な手間・コストがかかってしまいます。

具体的には、次のような事務的な手間・コストがかかります。

  • 給与計算、源泉徴収事務
  • 社会保険事務
  • 法人の決算申告
  • 変更登記

給与計算・源泉徴収事務

個人事業主・フリーランスの場合、従業員を雇っていなければ、給与計算や所得税・住民税の源泉徴収の事務は必要ありません。
ですが、法人にすると、一人社長の会社であっても、給与計算と源泉徴収の事務が必要になります。

源泉税は、原則として毎月納付しなければなりません。
ですが、「納期の特例」という制度を利用することにより、年2回の納付にすることができますので、事務手間を大幅に減らすことができます。

源泉所得税の納期の特例について、詳しくはこちらをご覧ください

社会保険事務

法人にすると、社会保険が強制加入になりますので、社会保険の事務が必要になります。

一人社長の会社であっても、最低限必要になる社会保険の事務は下記の通りです。

  • 社会保険の新規適用手続き(会社設立した時のみ)
  • 算定基礎届の提出(年に1回)
  • 月額変更届の提出(役員報酬を大幅に変動させた場合)

法人の決算申告

法人にすると、個人の場合の所得税の確定申告に比べ、税務申告の難易度が大幅に上がります。


あなた自身で法人税の税務申告をすることは不可能ではありませんが、かなりのエネルギーが必要ですし、間違えるリスクも高いです。
ですので、一般的には、法人税の申告は税理士に依頼するケースが多いです。

変更登記

役員の任期の更新・事業目的の変更・住所の移転などがあれば、会社登記の変更が必要になりますので、登記の手間とコストがかかります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

メリットとしては、給与所得控除と消費税の免除が特に大きいです。
デメリットとしては、事務的な手間・コストがかかることが特に大きいです。

法人成りの検討をするときは、メリット・デメリットの比較も大切ですが、いつ法人化するかというタイミングもとても大切です。

法人化(法人成り)のタイミングについて、詳しくはこちらをご覧ください。

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石水 克一

石水 克一

大阪市中央区本町の日本政策金融公庫の創業融資に強い税理士です。 起業家支援に特化した代表税理士が担当者となり、お客様の近くに寄りそって、しっかりと経営サポートをします!

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